By , 2015年7月6日 (月) 02:02:25

フラクタル図形はいくつかの動機から生みだされる. ひとつには,数学の帰納法などの概念や,コンピュータの再起処理・操作などを具体的に視覚化するためである. また一方で,天然に実在するフラクタル構造やカオス的な現象をシミョレートしようとする物理学的な接近のしかたもある. さらにグラフィク・デザイン的な見地から”美しい”フラクタル図形を描くことをめざすものもある. それぞれの分野の必要性から,さまざまの図形が描かれ,分析されてきた.

著者もまた,いくつかの図形を独自に考案したが,同時にそれらの既成のフラクタル図形の中での自らの占める位置を確認し,可能であれば,自らの研究結果に基づき,フラクタルの分野において,その体系化にいくらかでも寄与するべきではないかという必要性を感じた. したがって本論文においては自らの研究の報告と共に,他の研究との比較,および関連分野の体系化を行うことを目的とし,そのために本論文の前半部分を他の研究の紹介にあてている. 自らの研究に関しては,それら他の研究が確立している概念を極力用いて説明することを試みている. ただし”商力学系”という用語は筆者が特に必要を感じてつくったものである. この概念については,極力,整数論とフラクタルのいずれの分野においても,既に先行する概念の自然な拡張となるように配慮したつもりである.

本研究の最初の動機となったのは,再帰的な図形を描く際に,それらの図形における整数論的な性質が無視できなくなったことである. 即ちある種の空間充填図形は整数論による体系化が可能であり,また,整数論的な知識を必要とする.

逆に整数論自体に着目すると,特に整数の合同や類別,あるいはN進表現などが,空間充填や一対一対応などの再帰図形における概念と深い関わりがあることがわかった.

さらに整数論的であるにもかかわらず,これらの再帰図形は他のフラクタル図形と同様に複素力学系などの連続変数による解析が有効であることがわかってきた.

したがって,筆者は初期の空間充填図形を描くという段階から,現在では整数論と離散力学系との共通部分を研究する段階に至った.このような経緯に基づいて,以下に現在までの研究を報告する.

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